「ミシガンから始まった8年間のアメリカ生活」



児玉 進助 MBA (CEMP) 2002

私は 1999年から3年間ミシガン大学に在籍し School of Natural Recourses and Environment (SNRE) とビジネススクールのジョイントディグリープログラム(当時の CEMP、企業のサステイナビリティ、環境戦略にフォーカスしたプログラム)を 2002年に修了しました。 日本では機械工学科を卒業し、リクルートが紙媒体とネット媒体の融合を模索していた時期に同社に10年在籍し、当時興味を持ち始めた環境分野にキャリアチェンジするために留学を決意し退社しました。 ミシガン大学に決めた理由はSNREでした。北米とオーストラリアの大学を旅して回って自分の目的にあった環境分野のプロフェッショナルスクールを探したのですが、そこで見つかったのがミシガン大学のSNREでした。ビジネススクールへの出願を決めたのは SNRE在籍中で、途中から ジョイントディグリープログラムへ切り変え、結果的に3年間で Master of Science MBA2つの修士号を頂きました。卒業後は Ann Arbor地元の企業に就職し、一度ニュージャージーの会社に転職をしたあと2008年に日本に戻って来ました。私にとってアメリカに渡ることはキャリアだけではなく自分の人生に対する態度を考える良い機会になりました。振り返ってみてやはり10年前の決断があったからこそ面白い経験ができたと思います。そんな経緯を少しお話しいたします。

気がついてみると8年間アメリカにいたことになります。留学する学校を選ぶ時、漠然と卒業後そこに住みたいと思えるロケーションを選びたいという思いがありました。私の場合は治安が良く、程よく都会と田舎の両面を持つ場所という基準でAnn Arbor を選びました。それでも最初からアメリカに8年間も住むことになるとは思いませんでした。ミシガン大学で他の学生と話をしているうちに影響を受けていったのだと思います。 U of M Ann Arbor はとてもインターナショナルな大学で世界中から留学生が集まっています。中国人、韓国人それからインド系などアメリカ人以外の学生と接する機会がクラスルームの外でも数多くありました。私はそういう友達と仲良くなるうちに、かれらが当然のように卒業後アメリカで仕事をして、家族と生活するというライフプランを持っていることを知りました。 それなら自分もやってみようということで「その気」になってしまったわけです。

日本では10年間企業の中でやりたいことをやらせてもらい、ひと区切りをつけた感があったので日本へ戻るインセンティブが小さかったこともあります。 良い会社にいると優秀な同僚と潤沢な資本に恵まれ、大きな仕事をやることができますが企業の方向性と自分の志向が合わなくなる時期もあります。私は会社の事業の成長を考えるビジネスマン生活を十分楽しんだので、今度は「自分の人生を自分に取り戻そう」という気持ちが大きくなったのです。つまり会社の成長の為に働き続けるのではなく、もう少し自分に正直に自分の好きなことをやっても良いのではないかと思ったのです。
90
年代の後半、社会のサステイナビリティに関心をもつようになりました、そして企業経営にも環境負荷や持続可能性の考慮が重要な時代がくるだろうと思うようになりました。私の場合自分のコアスキルはインターネットを含む IT技術をつかったプロダクト開発で、将来環境問題の解決に情報技術を応用したいというのがテーマでした。そういうテーマとうまくマッチしたのがミシガン大学 SNREだったわけです。

SNRE
にはビジネススクールとのジョイントプログラムがあることは事前に知っていましたが、当初MBAにはあまり興味がありませんでした。ところが SNRE で参加した修士論文のプロジェクトのチームメートは全てビジネススクールの学生で、彼らと一緒にプロジェクトをやりながら、ビジネススクールの様子が良くわかりました。自分の志向を考えると、ビジネススクールに興味深い授業が数多くあり、ビジネススクールに在籍することで米国企業の経営者や経営幹部と知り合う機会が増えることが良くわかりました。

ビジネススクールで研究成果を発表する機会があり、その場で知り合った環境ベンチャーの経営者と仲良くなりました。 夏のインターンはマンハッタンにある彼の会社を拠点にクライアントをインタビューしながらサービスのリクアイアメントを作りあげ、その結果卒業後の内定をもらうこともできました。 情報技術を活用した戦略的な環境マネジメントシステムを作る会社でしたから、まさに私の留学目的にマッチした会社でひと安心でした。ところがインターンが終わって秋学期が始まるやいなや 9.11 が起こったのです。緊急事態ということで大学も休校になりました。ご存じのようにその影響は大きく、経済、雇用が冷え込み結果的に私のマンハッタン行きもなくなりました。

仕事を見つけなければ日本に帰るしかありません。次のチャンスがビジネススクールの MAPプログラムでした。参加するプロジェクトを選ぶために大学の体育館にMAP協賛企業がそれぞれブースを設けてプロジェクトの説明会が企画されました。企業は優秀な学生に来てほしいし、学生は自分の目的に合ったプロジェクトに参加したい。まさに就職フェアーのような雰囲気です。私は採用決定権がある人と直接仕事ができそうな地元の会社で、自分のスキルセットが売り込めそうなプロジェクトを選びました。出来るだけ大学で学んだ環境分野と関連が深いビジネスであることも重要でした。結果的に運良く第一希望の地元ベンチャーのサプライチェーン管理システムを作る会社でEMAPをすることができました。その会社のCEOはアメリカで事業を立ち上げることを志し Ann Arbor に移住して来た私と同じ年のインド人起業家でした。プロジェクトが終わったあと、私は彼の部屋に呼ばれ、引き続き彼の会社の立ち上げを手伝ってほしいと言われました。そして卒業後はその会社で働くことになりました。インドに開発拠点を立ち上げるために沢山のインド人技術者を電話インタビューしたり、新チームの教育プログラムを作ったり面白い毎日でした。日本人社員は私一人で残りはアメリカ人とインド人という構成、カルチャー的な違いに戸惑ったり、フラストレーションがたまることもありました。しかしそういう経験がその後グローバルなプロジェクトに関わる上で大きく役にたちました。

Ann Arbor
のベンチャーでは3年間働き、その会社のために自分のできることはほぼやり尽くした感が出て来たころ、私のボスであり、友人であったインド人経営者は私が次のステージに進み新しい仕事を見つけることを快くサポートしてくれました。2005年にニュージャージにあるサーチエンジンの会社に転職がきまりました。サーチエンジンというのは直接「環境」とは関係ありませんでしたが、いろいろな情報を検索可能にするサービスが進化すれば社会に大きく貢献できるだろうと思いました。このころ Ann Arborで子供が生まれ家族が増えていました。生活環境が変わるなかで自分のプライオリティも変わっているのを感じました。 なによりも外国人としてアメリカで仕事をしていくうえで、自分を必要としてくれるところで働き、生活に必要なお金を稼ぐというのが自然に一番重要なことになっていました。この感覚は不思議なのですが自分がやらなければならないことがハッキリするというか、フォーカスは家族をサポートするために稼ぎ、家族と有意義な時間を過ごす、そこにあったわけです。 それができない状況というのはアメリカで生きて行けない状況ですから、まずそこを必死に達成し、自分の仕事分野のえり好みはその次になったわけです。

アメリカで仕事をしてみて感じたのは、一応企業への「就職」という形はとっていても、「いついかなる理由で解雇されても構わない」という条件で働いているせいか、個人商店をやっている感覚です。 そういう中で自分のどういう能力に市場価値があり、さらに良い条件で働くには、どういうスキルを身に付けるのがいいのか、自分という資産の価値を上げるために非常にシンプルに考えざるを得なくなります。

私は両親の健康上の都合で一旦日本に帰って来る判断をしました。日本では個人としてクライアントと契約を結んで仕事をするようにしました。そのほうが自分の時間の使い方にコントロールがきくからです。 日本では少し変わった働き方かもしれませんが、アメリカ企業に「就職」していた時と感覚的にはあまり違いがありません。こんな働き方ができるのも一度自分のプライオリティが整理できたおかげだと思います。仕事に対するコントロールが効くようになると他の事とのバランスも自分で決める自由度が増えます。家族との時間の使い方、子供の教育への関わり方も自分で決めます。私がいま考えているのは何処に住んで、何処で子供を育てるか、これを自分で決められる状態をつくることです。簡単ではありませんが、家族と話しあいながら計画を進めています。

最初のきっかけはキャリアチェンジ目的の留学でしたが、いまでもインターネット系の分野で仕事をしています。大きく変わったのは仕事の分野ではなく、仕事に対する態度でした。「自分の人生を自分にとりもどす」という漠然とした思いは少ずつ実現されている気がします。これらはアメリカで知り合った留学生や経営者が語ってくれた人生観への共感、それから幾度となく遭遇した難しい局面で助けてくれた友人たちのおかげです。ただこれも全ては10年前に 今の皆さんのようにAnn Arbor行きを決断したことから始まりました。皆さんもきっとたくさんの有意義な体験をされることでしょう。機会があったら是非お話をきかせて下さい。

 

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