「MBAそしてRoss Schoolに興味をお持ちの方へ」


高橋 豪 (MBA04)

Ross School卒業生の高橋です。初めまして!私はRoss School2004年に卒業後、McKinseyを経て、現在は介護・医療分野の情報企業であるエス・エム・エス(東証マザーズ2175)の役員として新規事業の開発に携わっています。今回はMessage from Alumniということですが、まだ卒業後それほど時間が経っておらず、成果と言えるものもないまま、偉そうなことも言えるはずもなく、正直なにを書こうか悩んでしまいました。ただ自分自身がMBAを考え始めたときのことを振り返ってみると、MBA HolderがなぜMBAを志し、その後MBAがどのようにキャリアに繋がって行ったのかという話はとても参考になった記憶があります。そこで私も恥ずかしながら、これまでの自分のキャリアの歩みをMBAおよびRoss Schoolのことを軸に書いてみたいと思います。



Ross School

私は新卒では重工メーカーに就職し、そこで最初の3年間を企画・経理畑、そしてその後の3年間を営業の仕事に従事しました。当時はまだ外資への就職は今ほど盛んではなく、私のような文系にとっては金融や商社などの日本企業が人気就職先でした。しかしながら「結局日本の企業で、世界と互角に競争し、利益を出しているのはメーカーだけじゃないか。金融、商社にばかり学生が集まるなんておかしいじゃないか」という生意気な考えから、多くの友人たちとは異なるメーカー就職という道を選ぶことにし、その中でも社会インフラという目に見える形で自分の成果が確認できる重工会社に入社したのでした。

そこでの6年間はさまざまなことを学ばせてもらうと同時に、保守的というか硬直的と言ってもいい体制の壁にぶつかり、挫折を味わった期間でもありました。学びという点では、経理の基礎を叩きこまれることで経営数値に対するリテラシーを格段に上げることができたこと、さまざまな部署の人を巻き込みながら大きなプロジェクトを回して行くノウハウの基本を知ったことは貴重な体験だったと思います。特に後者については、頑固で生意気盛りだった自分が何度も壁にぶつかりながら、周りの人に納得してもらい、動いてもらうための柔軟性を少しは身につけることができたのは、上司・先輩の温かい支援のおかげだと今でも感謝しています。

ただ素晴らしい技術、人材がありながら、だらだらと不採算事業を続け、社員の潜在能力を引き出せずに停滞を続ける会社の経営には強い疑問を持つようになりました。このような会社の在り方に対する疑問からさまざまな経営書を読むようになり、そこで紹介されるさまざまな事例・理論に触れて、「このような新しい経営を行えば、わが社だけでなく日本企業はまだまだいくらでも成長できるはずではないか。なぜそれができないのか」という疑問を強くしました。また当時読んだGEに関する書籍で"Control your own destiny or someone else will"という一節に触れたことがきっかけで、会社に依存してしまうことで、最後に自分を貫くことができなくなるリスクに気付き、自分自身の運命をコントロールするためにも主体的に自分を高めることが必要という意識を強くしました。

そこでMBAで体系的に経営のことを学び、新しい活躍の場を求めることにし、仕事をしながら受験勉強を開始しました。今思い返せば、冷や汗ものですが、当時は必ず受かるつもりだったので、その時点で上司にもMBA留学するために退職することを伝え、退職する時期まで決めてしまいました。会社としては社費留学制度もあるので、それで行って欲しい気持ちもあったようですが、強情な私にいくら言っても決して決意は変わらないだろうというあきらめモードでもあり(笑)、割とあっさり了承してもらえました。そんな意図せぬ背水の陣で挑んだ受験勉強でしたが、幸いにも順調に進み、General Managementに強みを持つ学校を数校受験し、Ross Schoolから合格通知を頂くことができました。Ross Schoolは自分が影響を受けたGE研究の第一人者であるノエル・ティッシーがいるビジネススクールなので自分には理想的な選択だったと思います。


Ross Schoolでの2年間

Ross Schoolでは戦略とファイナンスを中心に勉強しました。戦略ではKarnani教授の"Growth Strategy"に強い影響を受けました。ケースでクラス討論を中心に授業は進められるのですが、そこで「お前が経営者ならどうする?」という質問でCold Callをし、それに対して学生が上っ面の理解で答えようものなら、"Why?"を何回も繰り返され、徹底的にやりこめられます。その議論の鋭さと厳しさから、ものごとの本質を突き詰めて行く重要性や、経営者に求められる覚悟のようなものを学んだような気がします。戦略はもともと重点的に勉強しようと思っていた科目ですが、意図せずその面白さにはまり、多くの科目を取ったのがファイナンスです。ファイナンスではValuationOptionなどの理論体系の美しさに魅せられるとともに、過度に数学に走らずに式の意味合いを伝えるアメリカ式の教え方には感心しました。ファイナンスに限らず、全般的にアメリカの授業は「学生にとってなにが必要か」というところから逆算してカリキュラムが決まっていくのに対し、日本では単にその教授が研究していることを学生にとって本当に必要かを不問のまま教えているので、学びの質がまったく違いました。そのためにMBAの勉強が面白くて面白くてたまらず、生まれてこの方経験したことがないほど勉強に打ち込むことになりました。

経営の勉強に魅了される一方で、当然のごとく苦労もありました。もともと英語は得意だったので、読み書きはまったく苦労しなかったのですが、話す方は発音のまずさもあってかなり苦労をしました。話すのが苦手だと、グループワークやクラス討論でもなかなか貢献できません。Ross Schoolの学生はとてもCooperativeな人が多いのですが、それでも貢献が少ないと思う学生に対しては厳しく接してくる人もいて悔しい思いをしたこともあります。結局2年間くらいでは大して英語はうまくなりませんでしたが、それでも数字なり、Writingなり、自分の得意な分野で死に物狂いで努力することでなんとか周りに貢献もできるし、そういう前向きな努力・姿勢が高く評価されることを学べたのは貴重な財産です。


McKinseyでの5年間

卒業後はMcKinseyに就職することにしました。といっても留学前からコンサルティングを強く意識していたわけではありません。もともとは事業会社でP/Lを持ってみたいと考えていたのですが、日系の企業で自分の年齢で活躍できる会社はあまりないですし、外資のポジションにもあまり魅力を感じませんでした。というのも、もともと「日本の経営はこのままでいいのか?」という問題意識から始まった留学であり、2年間アメリカで過ごすことで、より日本を強く意識する気持ちが強まっていたからです。そこで「日本の事業会社で活躍できるところがないなら、もう少しマクロからアプローチするためにPublic Policyの大学院に行き直そうかな」と考えているときに、Ross Schoolにまでリクルーティングに来てくれたMcKinseyのプレゼンに参加し、McKinseyの「代表的日本企業のクライアントを変革することで日本に貢献しよう」という考え方に強く共鳴してMcKinseyに入ることにしたのです。

McKinseyにはAssociate, Engagement Managerとして計5年いましたが、その間本当にいろいろなことを経験し、学ばしてもらえたと思います。ものすごく成長欲求が強く、かつ社会に対する意識が高い同僚と働くことは非常に刺激的でした。McKinseyでは一般に思われている以上に多種多様な人がグローバルで働いているのに、ValueそしてMcKinsey流の問題解決の手法が本当に全員に共有されていることには感動しました。ここでの5年間ではClientに対するValueに対してものすごく高い基準を設定し、その基準に達するまでとことん問題解決を突きつめて行くことを経験することで、どこでも勝負できる問題解決能力とともに、「なにがなんでもValueを出す」というプロフェッショナリズムを叩きこまれたと思います。


そんな充実したMcKinsey Lifeでしたが、一方で終盤には不完全燃焼を感じるようにもなりました。というのも、当たり前ですが結局コンサルタントは第三者のアドバイザリーであって、事業の当事者ではないわけです。どんなに自分の提言に自信があっても、自分では実行できず、クライアントにやってもらわないといけない。クライアントリーダーと二人三脚でやっていければいいわけですが、実際にはクライアントの少なからずが抜本的な痛みを伴う変革は最初からやる気はなく、なにか努力をしていることを社内外に見せるためにコンサルティングファームを使っているケースも多くありました(これを個人的に「アリバイ作り)と呼んでいました)。そのようなプロジェクトをいくつか経験することで、今さらですが、「日本に足りないのはコンサルタントではなく、覚悟を持って実行を推し進める経営者だ」という意を強くし、未熟ながら自分で経営の当事者になって最後までやりきりたいと考え、もともと留学前に考えていたように事業会社に転職することにしました。


現在:エス・エム・エス

事業会社に転じることを決めた後は、旅行などもしながら、もう一度自分が生涯を賭けてやりたいことはなにかを見つめなおしました。最終的にエス・エム・エス(以下SMS)に決めたのはこの会社で日本を変えることに貢献できると考えたためです。日本はこれから高齢化社会を迎えますが、その高齢化社会をどうデザインするか次第でこれからの日本の成長力、競争力はまったく変わってくるはずです。このSMSという会社は高齢化社会に必要な情報インフラを提供する会社なので、高齢化社会の在り方に大きな影響を与えることができると考えました。

もっとも、SMSはまだまだ小さな会社(2009年度で売上75億円程度)なので、成長するにはいくつも越えなければいけない壁があります。現在は市場のトップを走っていますが、市場が大きくなって大手が本格参入してからがSMSにとっても正念場だと思います。ただ自分としては、まだ小規模なベンチャー故のこのような不確かさに逆に魅力を感じました。大きな企業だと、自分が腕を発揮させてもらうには時間がかかるし、そもそも図体がでかいので後からの抜本的な方向転換が難しい。でもSMSは機動性に富む小さな会社であるから、自分に本当の力があれば方針転換することでなんとでもなるはずなのでむしろやりがいに感じました。やはり小さなところでやると、良くても悪くても自分の力次第で結果を変えることができ、まただからこそ結果に責任を負わなければならないので、その環境が自分の力を引き出してくれると信じています。自分の性格の問題もありますが、大きな会社に入ってしまうと、そういう気持ちで働くことがあまりイメージできませんでした。もちろんそれはやりがいがあると同時につらいこともでもありますが、SMSには若くて情熱的な社長以下の社員がいて、「社会のために」という使命を胸に働いています。どうせ苦労をするなら、そういう思い、情熱を共有できる人たちとしたいと思ったのでした。そのSMSで現在は役員として新規事業の創出に従事しています。高齢社会の未来図とそこで必要な情報インフラを考え、SMSの新規事業のアイデアにつなげていくのはかつてないほどエキサイティングです。


最後に:改めてメッセージ

以上のようなキャリアを歩み、まさにこれから自分の選択が正しかったことを証明しないといけないタイミングに私はあるわけですが、その段階でもMBARoss Schoolが自分の可能性を広げてくれたということは間違いなく断言できます。

それはひとつにはMBAという学位が、良くも悪くも成長を加速させるパスポートであることです。MBAを持っていなくても優秀な方はいくらでもいます。しかしながら社内であれ社外であれ労働市場には情報の非対称性があるため、優秀な人が優秀と評価され、さらに成長するためのチャンスを与えられるわけではありません。そんな非効率な労働市場においては、MBAという学位はホルダーが情熱とある程度のビジネスリテラシーを持った人であることをシグナルとなるため、より成長するためのチャレンジの機会を与えられ、そこで揉まれることでさらに成長し、また新たなチャレンジを与えられるという成長サイクルにはいることができます。

またもちろん学位としてのシグナル効果だけではなく、Ross Schoolで学んだことが自分が仕事で成果を上げるために役立ったことは間違いありません。経営というのは、ファイナンスから行動科学まで含む非常に多岐にわたる知識が必要となる分野です。普通の実務だけではなかなかこれだけの広範囲のことを学ぶのは難しく、戦略ファームのコンサルタントですら自分が経験したプロジェクトの範囲でしか知識がつきません。私の場合はRoss Schoolで広範囲な経営学を学んだことが、McKinseyでもSMSでも、課題に取り組む上での、初期仮説を相対的に筋のいいものとしてくれ、ずいぶんと自分の生産性を上げてくれたと思います。ただ本当に自分にとっての最大の財産は、在学中のみならず、卒業後も、一生刺激し合い、支え合える、仲間を得たことではないでしょうか。卒業後、仕事で壁にぶつかったときに、仲間からの励ましや、彼らのがんばる姿を見ることでどれだけ勇気づけられたか分かりません。Ross Schoolの授業において、教授が「e-Learningがある時代に、あえて同じ場所に集まり、一緒に勉強することの意味は、お互いから刺激を受けることである」と発言をしていましたが、この言葉のとおり、人間は互いから学び、刺激を受けることで成長をするのだと思います。そのための一生の友人を得たことが自分にとってのMBA, Ross Schoolの最大の価値だと思います。

長くなりましたが、これからMBAを志していられる方には次の3つのメッセージを送り、結びとしたいと思います。

人生は一回限り。勇気を持って初めの一歩を踏み出そう!(受験準備)
失敗しないのはチャレンジしていない証拠。チャレンジして失敗から学ぼう!(在学中)
MBAは単なる年収アップの手段にあらず。学んだことを活かして社会に貢献しよう!(卒業後)

ご健闘をお祈りします!

以上

 

NB Fellowship (New!)

Full-time MBAに私費で留学する日本人向けに、当校OBが奨学金制度を設立しました。

 

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